今年は晴れるかしら
彼女が不意に僕を見つめて問い掛けた。
ある夜の話
眩しいほど輝く月が、彼女と僕を照らしている。
照れながら微笑む彼女。
僕は何も答えず、静かに彼女を見つめていた。
やがて、彼女はゆっくりと瞬く星空を見上げた。
明日は、年に一度の特別な日。
彼女がもっとも待ち焦がれている、約束の日。
もう一週間も彼女は空を見上げている。
明日、晴れるかどうか。
ここ最近の彼女の関心事はもっぱらそれだった。
晴れれば僕は彼女を連れて、あの川まで昇るのだ。
彼女と、彼女が愛する人が無事に出会えるように、僕は彼女を運ぶのだ。
彼女は彼のことだけを考えて、無邪気に僕の背中に体を預ける。
この痛みを僕は幾度も感じ、そして幾度も感じ続ける。
僕は彼女から視線を外し、空を見上げた。
雨が、降ればいいのに。
そうすれば、落ち込んだ彼女を抱きしめて、慰められるのに。
向こう岸にいる奴のことなんか忘れるくらい、甘やかして慰められるのに。
だけど。
雨雲をみつめ、哀しそうな表情で窓辺に立ち尽くす彼女をみて、僕は全力で雲を呪うだろ。
彼女にそんな顔をさせた雲が許せなくて、何もできない自分が悔しくて。
彼女は嬉しそうに空を見上げながら七夕を口ずさんでいる。
今日は快晴。
けれど湿った空気が叙々に嵩を増していることに、彼女は気づいているだろうか。
明日は、きっと、雨。
僕は彼女の問い掛けにきっと晴れますよと小さく返した。
* * * * *
ありがとうございました。
一応カササギ視点のつもりです。
なんで織姫が空の川に昇るの?とかは聞かないで。
そういう設定なんです☆(ぇ
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