何が食べたい?



「きゃっ…」

背後に重みと体温を感じた。思わず、小さく悲鳴をあげる。
犯人はわかりきっているのだが、私はゆっくりとふりかえった。

「……先生、どうしたんですか?」

「んー?ちょっと、ね。」

落ち込んでる。
柑は仕事で失敗したり揉めたりすると決まって、私の背中に寄りかかる。
柑は笑ってるけど、私にはわかる。素直に落ち込んでるって言えば、慰めてあげるのに。

「それよりさー亜貴?なーんで今日は俺のこと、柑って呼ばないの?」

「え……?だって…。」

だって柑が隠してるから。
柑が落ち込んでることを隠してるから、嫌味で先生、って呼んでるなんて恥ずかしくて言えない。

「あーあ、俺の硝子のハートが傷ついちゃったなぁ。」

「……どうすればいい?」

にやり、と柑が笑う気配がした。腕が腰にまわる。

「んーそうだな。……俺、お腹すいちゃった。」

「何が食べたい?オムレツならすぐ…」

台所へ向かおうとした私を柑はぐい、と引き留め耳に顔を寄せた。

「俺、お前が食べたい。な、いいだろ?少しくらい、さ。」




+一言コメント+
甘々路線を目指してみましたw
作中でも二人の距離がこのくらい近かったらいいのになぁ…






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